日本ワインの特徴とは?産地や品種について解説します

お酒の知識

日本で本格的なワインブームが起きて久しく、どこでもワインが買えるようになりました。しかし、私たちが日本ワインを店頭で見かけることはあまりありません。なぜなら、日本ワインは日本での流通量全体の4%ほどでしかないからです。

しかし、近年では、日本ワインは国際コンクールで特別な賞を受賞するなど、世界を魅了する高品質なワインとして急成長を遂げ、注目を集めています。今回は、そんな日本ワインについて詳しく説明していきます。お店に合った日本ワインをメニューに加え、売上をアップしていきましょう。

日本ワインの歴史

日本ワインについて詳しくお伝えする前に、日本ワインの歴史を簡単に見ておきましょう。

日本ワインのはじまりは、一般的に今から140年前の明治時代と言われています。世界的なワインの歴史は紀元前5000年ごろと言われているので、日本ワインの歴史はかなり浅いと言えます。

開国後、明治政府が殖産興業政策の一環として、ワイン醸造のためのブドウ栽培とワイン醸造を推奨しました。そして、すでに生食用のブドウ栽培が盛んだった山梨県で、最初のワイン会社「ブドウ酒共同醸造所」が設立されました。これが本格的な日本ワイン作りのはじまりと言われています。しかし、ワインの渋みと酸味が日本人の味覚に合わず、消費者に受け入れられませんでした。このような背景から日本でのワインの市場は低迷を続けます。

時は流れ、1980年代のボジョレーヌーボーの大流行で、ワインが日本の消費者に受け入れられるようになりました。2000年以降になると日本のワイン市場が拡大し、小規模ワイナリーの設立が増えてきました。これにより、徐々に日本ワインも注目されるようになりました。さらに、2010年のワイン国際機関「国際ブドウ・ワイン機構」に日本固有のブドウ品種「甲州」が、2013年には「マスカット・ベーリーA」がワイン醸造用のブドウ品種として登録されました。そして、2018年にワイン表示が厳格化され、今の高品質な日本ワインが出来上がりました。

日本ワインとは

日本で作られているワインは「日本ワイン」と「国内製造ワイン」に分けられます。

「日本ワイン」とは、国産のブドウのみを原材料として使用し日本国内で製造された果実酒を、「国内製造ワイン」は日本ワインを含む、日本国内で製造されたすべての果実酒と甘味果実酒を指します。

2015年に国税庁が定めた「ワインのラベル表示ルール」により、この2つのワインの違いはラベルに表示されるようになりました。ちなみに、「国産ワイン」という表示は存在しませんので、気を付けましょう。

日本ワインのラベルについて

日本ワインを提供する際は、必ず裏ラベルもチェックするようにしましょう。日本ワインの表記はラベルの表面と裏面のセットで記載されることが多く、日本ワインの詳細は裏面のラベルに記載するよう義務付けられています。

日本ワインのラベル

  • 表ラベルに「日本ワイン」の表示が可能
  • 裏ラベルでは「日本ワイン」の表示を義務付け
  • 一定の条件の下、地名や品種、収穫年などの表示が可能

次の条件により、そのラベルに①地名、②ブドウの品種名、③ブドウの収穫年を表示できます。

①地名を表示できる場合

・ワインの産地名(「新潟ワイン」、「新潟」等)の表示
⇒地名が示す範囲内にブドウ収穫地(85%以上使用)と醸造地がある場合

・ブドウの収穫地名(「山梨産ブドウ使用」 等)の表示
⇒地名が示す範囲内にブドウ収穫地(85%以上使用)がある場合

・醸造地名(「山梨醸造ワイン」 等)の表示
⇒地名が示す範囲に醸造地がある場合(併せて「山梨は原料として使用したブドウの収穫地ではありません」等の表示が必要)

※地名については、ラベル表記の中でも商品のブランドイメージに直結するため、表示基準は細かく規定されています。

②ブドウの品種名を表示できる場合

・単一品種の表示
⇒単一品種を 85%以上使用した場合

・二品種の表示
⇒二品種合計で 85%以上使用し、量の多い順に表示する場合

・三品種以上の表示
⇒表示する品種を合計 85%以上使用し、それぞれの品種の使用量の割合と併せて、使用量の多い順に表示する場合

③ブドウの収穫年を表示できる場合

⇒同一収穫年のぶどうを 85%以上使用した場合

国内製造ワインのラベル

  • 地名や品種などの表示は不可
  • 表ラベルに「輸入ワイン使用」「濃縮果汁使用」などの表示を義務化
  • 裏ラベルには原材料として使用した、輸入ワイン、濃縮還元ぶどう果汁、ブドウは使用割合の多い順に表示
  • 「日本産」の代わりに地域名、「外国産」の代わりに原産国名を表示することも可能

原料のブドウの品種

日本ワインの原料として日本固有種である「甲州」、「マスカット・ベーリーA」の2つが代表されます。この2つのブドウは、O.I.V.(Office International de la vigne et du vin 国際ブドウ・ワイン機構)に品種登録されており、白ワインには「甲州」、赤ワインには「マスカット・ベーリーA」が使われます。

「甲州」を原材料にした白ワインは、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘の爽やかな香りで、フレッシュで軽やかな味わいの辛口白ワインです。「甲州」は一般的な白ブドウに比べて果皮がやや厚いため、あえて果皮由来の成分をワインに多く移行させたものや、オレンジ色の外観をしたオレンジワインなども作られます。

「甲州」の歴史は古く、シルクロードを渡り、仏教と共に中国から日本にもたらされました。もともと生食用として栽培されていましたが、現在ではワイン原材料で最も多く使用されているブドウです。他にも白ワインには「ナイアガラ」、「デラウエア」も多く使われます。

一方、「マスカット・ベーリーA」を原材料にした赤ワインは、チェリーやストロベリーのような甘い香りで、タンニン量が少ない軽やかな味わいの赤ワインです。

「マスカット・ベーリーA」は明治時代、新潟で「日本ワインの父」と呼ばれる川上善兵衛によって作られた、日本ワインに欠かせないブドウの1つです。

近年では、有機栽培・天然酵母で醸したタイプ、全房発酵で醸したタイプ、補糖や補酸をしないピュアな味わいを強調させたタイプなど、「マスカット・ベーリーA」の良さを最大限に生かしたワインも作られています。

他にも赤ワインには「コンコード」「キャンベルアーリー」も多く使われます。

産地ごとの特徴

日本ワインの場合、フランスやイタリアなどの伝統国とは違い、地域とブドウ品種が紐付いているわけではありません。そのため地域と共に品種もラベルに表記されています。

日本ワイン生産上位4県は順に、1位 山梨県、2位 長野県、3位 北海道、4位 山形県となっています。それでは上位4県の特徴を見ていきましょう。

山梨県

山梨県は「日本ワインと言えば山梨」と言われるほど有名なワイン産地です。ここは、日本で一番栽培されているワイン用品種「甲州」の約93%を生産する日本最大の産地です。

甲府盆地は昼夜の寒暖差が激しく、ブドウ栽培に非常に適しており、白ワイン用には「甲州」、赤ワイン用には「マスカット・ベーリーA」が栽培されています。最近のトレンドとして「甲州」を使った「オレンジワイン」が注目されています。オレンジワインとは、白ブドウを使って赤ワインのように作ったオレンジ色のワインのことです。ワイン愛好家が注目しているワインの1本として準備しておきたいワインです。

長野県

長野県は全体的に朝晩の気温差が大きく、降水量が比較的少なめで、国際品種から土着品種まで幅広く栽培しています。赤ワイン用にアメリカ系品種の「コンコード」、白ワイン用に「ナイアガラ」が多く栽培され、この2品種で長野県のブドウ栽培面積の48%を占めています。

他にも、赤ワイン用のブドウ品種「メルロー」は品質が高いことで大変有名で、近年では白ワイン用ブドウ品種「シャルドネ」もワイン愛好家から人気が高く、世界的にも高く評価されています。海外からのお客様にも馴染みのある国際品種で、美味しいワインがたくさんある長野県産ワインは、今後の注目ワインメニューとして要チェックです。

北海道

北海道はブドウの生育期間中に梅雨や台風の影響を受けにくく、本州に比べて湿度と気温が低いのでブドウ栽培に非常に適しています。そこでは、白ワイン用に「ナイアガラ」、赤ワイン用に「キャンベルアーリー」が栽培されています。他にも北海道に気候が似ているドイツ系のブドウ品種が多く栽培されています。
北海道は白ワインを作るのに適した風土ですが、近年は赤ワイン用の品種である「ピノノワール」も注目されています。特に池田町では、北海道特有の品種「山幸(やまさち)」という黒ブドウ品種が開発され、このブドウを原料にワインを作ると濃い色調で酸味の高い赤ワインとなります。そしてこの品種は「甲州」や「マスカット・ベーリーA」に続いて2020年に国際ブドウ・ワイン機構(O.I.V)に品種登録されました。このことにより、世界へ山幸ワインをアピールすることができるようになり、ブランド価値も上がりました。北海道ワインを提供するなら、世界的に注目されている山幸ワインを提供してみてはいかがでしょうか?

山形

寒暖の差が激しいため果樹栽培が盛んな地として有名で、ブドウの品質もとても優れています。白ワイン用には「デラウエア」、赤ワイン用には「マスカット・ベーリーA」が栽培されています。実は、山形県は江戸時代からブドウを作っていた歴史があり、最近ではワインの品質が上昇し注目されている土地でもあります。2021年には日本の原産地呼称「G.I.山形」を取得しました。

他にも、岩手のワイン、新潟のワイン、 九州のワインなど、地域によってそれぞれ個性豊かな日本ワインを楽しむことができます。

まとめ

日本では現在、新規の小規模ワイナリー建設が続いています。これは量よりも品質と個性を重視しようという各地の生産者からのメッセージでもあります。これらの個性豊かな日本ワインの中からあなたのお店にピッタリなものがきっと見つかるはずです。世界でも注目されている高品質な日本ワインをぜひ取り入れて、単価アップを図ってくださいね。