そのワインって重いor軽い!?

お酒の知識

「ワインは重た~いものをください!」
注文時によく使われる言葉です。「重いワインって何となく濃いんだろうな…」「飲み応えがあるのかな…」というイメージは沸きますが、実際のところ『重い』と表現されるワインはどんな状態なのでしょうか?
なにがワインを重くするのか…今回はそんな『重いワイン』についてみていきましょう。

『重い』とはどいうこと?

ワインでなくても日常生活で飲み物を口にするときに、重さを感じたことはないでしょうか…。例えば、”のむヨーグルトと低脂肪牛乳”。どちらも乳製品ですが、のむヨーグルトのほうが重たく感じませんか?『重い』ということは液体に感じる重量感です。知らないうちに、口に含む液体に重さを感じているのです。そして液体の重さというのは、味の複雑性や香りの広がり、テクスチャーや余韻の長さなどを表現しています。

ワインの味わいの豊かさを表現するときに「ボディ」という言葉も使います。

ボディ(bodied)は日本語に訳すと「体」となります。ワインを「肉付きのよい」「グラマーな」「スリムな」と表現することがあります。ブルゴーニュ型のボトルを女性的、ボルドー型のボトルを男性的だと例えたり、人の体に例えて表現されてきたことからも、この言葉が使われています。

赤ワイン、白ワイン共に重いワインがありますし、もちろんロゼワインにもスパークリングワインにも重いワインはあります。重いときにはフルボディ、中間の時にはミディアムボディ、軽いときにはライトボディ、という表現が使われており、飲んだときに一口目のインパクトが強く、口に含んだ瞬間に風味が広がっていくワインはフルボディであることが多いです。そのようなワインは大体の場合、アルコール度数が高い、タンニンが多い、樽による熟成香があります。

ボディに影響を与えるものとは?

ワインの重さの違いは、どのようにして生まれるのでしょうか。

アルコール

ワインは80~90%が水分で、その次に多い成分としてあげられるものがアルコールです。このアルコールこそボディに大きな影響を与える原因物質の一つなのです。

アルコールが強いほどフルボディでしっかりとしたワインになり、弱ければライトボディで繊細な印象のワインになっていきます。一般的に温暖な場所で育ったブドウは、太陽の光を浴びてよく熟すので糖度が高く、果実味も豊かになります。アルコールの原料となる糖分がより多く含まれるブドウから造られたワインは、アルコール度数も高くなります。

アルコールとボディの関係性は、ワインだけでなくすべての酒にも当てはまります。

ビールのアルコール度数は5%前後なのでライトボディ、日本酒は16%前後なのでミディアム、ウイスキーは約40%なのでフルボディのイメージです。

夏にはビールが飲みたくなり、冬には日本酒やウイスキーが飲みたくなります。日本の高温多湿な夏では、重たい飲み物を口に含む機会は少なくなります。それに対して寒さが厳しい冬場は重めのお酒が飲みたくなる…普段は何気なくやっていたお酒選びも、実は自然なことだったのです。

タンニン

ワインの中でフルボディと表現されるワインは、甘み・渋み・酸味・香りと様々な要素が強く、色調も濃くなります。反対にライトボディと表現されるワインはそれぞれの要素が全体的に弱くなり、色も淡い傾向です。

このタンニンもボディを決める要因に関与しているのです。タンニンが豊富ということは、そのワインにはポリフェノールが多く含まれています。ポリフェノールはブドウの皮や種に含まれているアクや渋みの成分です。ポリフェノールは様々な成分と結合して複雑な風味を作り出し、その中のタンニンによって骨格がしっかりとし、口内で重量感を感じます。

赤ワインの場合、フルボディのワインと言われる要素を大きく分ける『甘み(果実味)・酸味・渋味』の3つです。ライトボディに比べればミディアムボディ、ミディアムボディに比べればフルボディといったように、ボディにはグリセロールなどの甘み、アルコール度数や有機酸など、さまざまな要因が関係しています。重量感のあるワインには渋みが豊富な傾向にあります。渋みのもとであるポリフェノールを多く含んでいるからこそ、複雑さや味わいの深みが生まれるのです。

ポリフェノールを多く含むブドウ品種を使ったワインほどフルボディと表現されます。カベルネソーヴィニヨン・シラー・ネッビオーロなどはその代表的な品種です。

ワインは瓶詰めをする前に、熟成という工程を経るのが一般的です。ワインを熟成させるときには、ステンレスタンク・コンクリートタンク・樽などといろいろな選択肢があります。

白ワインを樽で熟成させると、ほかのものと比べ、ワインの風味や味わいに香ばしさやコクが出ます。白ワインにおけるフルボディの要素を大きく3つに分けるとすると、『甘み(果実味)・酸味・コク(余韻)』です。もちろん赤ワインにも樽の影響はあるのですが、白ワインのほうが、よりわかりやすい影響が表れます。

なぜ樽で熟成させると香ばしさやコクが出るのかというと、その秘密は樽の作り方にあります。木材から成形する際に、内側になる部分を炙ってロースト加工をします。その樽でワインを熟成させると、成形する際にできた焦げている場所から、香ばしい風味や旨味の成分がワインに移っていくのです。樽の原料となる木材の違いや、ロースト加減にもよりますが、焼けたトーストのような香りや、バニラのような甘い香りがワインに与えられます。

このように樽の影響を受けたワインは『重め』に感じられます。ステンレスタンクやコンクリートタンクで熟成させた場合は、果実味が素直に表れ、ライトボディやミディアムボディと表現されることが多いです。

まとめ

ワインのボディは、個人の感覚でもある『ワインの重量感』で決められます。味の感じ方は人それぞれで、ライトボディと書かれていても人によっては「重い」と感じることもありますし、フルボディでも「物足りない」と感じる場合もあります。

明確な基準があるわけではありませんが、ワインを『重さ』で選ぶ一つの目安として、タンニンの含有量や、アルコール度数、そのワインの製造工程などを捉えておくと便利かもしれません。