飲食店を経営する上で、ドリンクメニューの重要性を考えたことはありますか?もちろん、ドリンクメニューはどの飲食店にもありますので、各店それぞれにメニューを増やしたり、厳選したり、試行錯誤をしていると思います。
しかし、改めて「重要性」と問われるとあまり考えたことがない人もいるのではないでしょうか。実は「経営」の視点で見るとドリンクメニューには大きな重要性が隠れています。 今回は、経営という視点でドリンクメニューの重要性を紐解きます。
飲食店にとってなぜドリンクメニューは重要か
経営者目線で考えたときに、なぜ飲食店にとってドリンクメニューは重要なのでしょうか。それには、次の3つの理由があります。
- 原価率が低いためお店の利益向上に直結する。
- フードメニューに比べてオペレーションコストが低い。
- 顧客体験価値が高い。
では、順番に見ていきましょう。
(1)原価率が低いためお店の利益向上に直結する
原価率とは「売上に対する原価の比率」のことです。一般的に、飲食店における原価率の目安は30%が望ましいとされていますが、ドリンクの場合、原価率を10%〜20%程度に抑えることができます。つまり、ドリンクメニューをたくさん販売することで、効率よく利益を上げられることができるのです。
(2)フードメニューに比べてオペレーションコストが低い
飲食店におけるオペレーションコストとは、お店を回す上で必要になるスタッフの作業や動きの工数のことです。
ドリンクメニューはフードメニューよりも作るのが簡単です。従ってドリンクメニューはフードメニューに比べてこのオペレーションコストが少ないため、原価率と同様に、効率的に利益を上げることができます。
(3)顧客体験価値が高い
顧客体験価値とは、顧客が商品やサービスを体験したときに感じる価値のことです。実は、ドリンクメニューは、顧客体験価値が高い商品なのです。大人数でパーティでもしない限りたくさんの種類のドリンクを飲むことはできませんし、コンビニで種類を選んで買ったとしてもお店で飲む味には劣ります。また、珍しい種類のドリンクは個人で手に入れるのは難しいので、たくさんの中から好きなものを選べる、というだけでも価値があります。
お客様が飲食店でドリンクを飲む価値は、
- たくさんの種類の飲み物がある。
- 家では飲めない飲み物が飲める。
- 家で飲むものより美味しい。
こんな要素が考えられます。この点を理解した上で、お客様にどんな体験を提供するか考えることが重要となります。
メニューの量を増やすことに力を入れれば、たくさんの種類の飲み物があるという価値を高めることができますし、珍しい種類のメニューを取り入れれば、家では飲めない飲み物が飲めるという価値を高めることになります。また、味が良くなれば、家では味わえないものが飲めるという価値を提供できます。 これらは、すべて顧客体験価値を高めることにつながります。
FD比率を見直そう!
FD比率の見直しも、飲食店の利益向上においては重要です。FD比率とは、売上高のうちに占めるフードとドリンクの比率です。ドリンクは原価率とオペレーションコストが低いので、ドリンクの比率を高くすることで利益向上を狙うことができます。
また、ドリンクの比率を高くすれば、その分フードの比率が低くなるので、食材廃棄によるロスを減らすことができます。フードの方がドリンクよりも廃棄の期限が早く、廃棄しなければいけない分のコストが多いためです。
飲食店の経営においては、FD比率だけでなくFL比率が重要と言われています。FL比率とは、売上高に占める食材費+人件費の比率のことです。
FD比率を見直し、オペレーションコストも廃棄ロスも少ないドリンクの比率を高くすれば、食材費も人件費も低くなるので、FL比率は低くなります。FL比率を下げることができれば、経営のコストが減ることになるので、利益向上につながります。 なお、目標とするべきFD比率は、飲食店の業態によって異なります。飲食店の業態別のFD比率の目安としては、以下の表をご参照ください。
(参考)飲食店の業態別FD比率
業態 | フード比率 | ドリンク比率 |
---|---|---|
ラーメン | 95% | 5% |
レストラン | 80% | 20% |
カフェ | 70% | 30% |
居酒屋 | 60% | 40% |
立ち飲み | 60% | 40% |
ドリンクメニューの定期的な見直しを!
これまで紹介してきたように、原価率、オペレーションコスト、顧客体験価値、FD比率やFL比率といった様々な側面から見て、ドリンクメニューの改善は利益向上に直結しやすいというメリットがあります。是非、ドリンクメニューの定期的な見直しをしていきましょう。
ドリンクメニューを見直す上では、新しい発想やその時々のトレンドを取り入れることも重要です。しかし、ただやみくもに増やしたり減らしたりしても効果は望めません。その施作が本当に利益向上につながるのかを考えて見直すことが大切です。原価率、オペレーションコスト、顧客体験価値を考えて、定期的な見直しをしましょう。その際、フード◯万円:ドリンク◯万円というように、FD比率を意識して具体的な売上目標を立てると良いでしょう。
まとめ
今回は、飲食店にとってなぜドリンクメニューが重要かを考えた上で、FD比率の見直しとドリンクメニューの定期的な見直しを提案しました。飲食店におけるドリンクメニューの大切さが少しでも伝わったようなら幸いです。ぜひ経営の視点からドリンクメニューについて考えてみてくださいね。