2008年頃にブームが到来し、今や飲食店の定番ドリンクとなった「ハイボール」。昨今のレモンサワーブームに影をひそめたと思われがちですが、未だにその人気は衰えていません。今回はそんな、どのお店でも扱う定番ドリンクであるハイボールを更に強化しお店の武器に変える方法をご紹介いたします。
○念の為おさらい!ハイボールとは?
一般的にハイボールとは、ウイスキーを炭酸水で割ったものを指します。他にも、炭酸水の代わりにジンジャーエールで割ったものを「ジンジャーハイ」、コーラで割ったものを「コークハイ」などと呼ぶこともあり、ドリンクメニューの定番ジャンルとして定着しています。
ちなみにこの「ハイボール」という言葉、酎ハイ(チューハイ)の語源であるとも言われています。ウイスキーの代わりに焼酎を割った「焼酎ハイボール」が短縮されて「酎ハイ」と呼ばれる様になりました。
ハイボールが人気な理由は「美味しいから」「好きだから」というだけではありません。実はハイボールの材料であるウイスキーには糖質が含まれず、プリン体もほぼありません。そのため、健康に気を使っている方からのニーズが高いとも言われています。
○飲食店にとってのハイボール
このように様々なお客様に対して人気なハイボールですが、飲食店にとってのメリットはそれだけではありません。実はハイボールは、お店にとって「コスパが良い」商品として飲食店経営には欠かせない商品のひとつなのです。
・原価率が低い!
まずは原価率についてです。ハイボールは原価率の低い商品として知られています。ハイボールの販売価格は地域によっても差はありますが、400円前後で提供しているお店が多いかと思います。それに対して原価は50〜60円程度。割材は炭酸水ですのでコストが掛からず、プレミアムなウイスキーを使わない限り一杯当たり10〜15%の原価率となります。それに対して生ビールの原価は150円〜200円程度。生ビールの相場が500円程度であることを考えるとその原価率は30%〜40%。ハイボールがいかに原価率の低い商品であるかがわかります。
・オペレーションコストが低い!
オペレーションコストが低いことも特徴の一つです。サワー・チューハイ系と同様に、炭酸水で割るだけですので誰でも簡単に作ることできます。生ビールのように別オペレーションになることもありませんので、生産性が高いメニューであるとも言えます。
このようにハイボールは飲食店にとって非常に「コスパが良い」商品ですので力を入れない手はありません。それではどのようにすればハイボールを更に強化することができるのでしょうか。
○バリエーションを増やして満足度・売上に貢献
ハイボールを強化する方法、それはスバリ、バリエーションを増やすことにあります。
・選べる楽しさで顧客満足度が向上!
メーカーの調査をみると、ハイボールを注文するお客様のうち60%以上のお客様が複数種類のハイボールを求めていることが分かります(※サッポロビール調べ・2020年)。そのためウイスキーのバリエーションを増やすことは満足度の向上に役立つと言えるでしょう。
バリエーションの増やし方は大きく分けて3つ。炭酸水の代わりにジンジャーエールなど利用する「割材を変える方法」。スパイスやハーブを加える「ちょい足しする方法」。そして「ウイスキーを変える方法」があります。
割材を変える方法
割材を炭酸水から他のソフトドリンクに変えるだけで、バリエーションを増やせますのでぜひ取り組んでみて下さい。定番のジンジャーエールやコーラの他、カルピスソーダやオレンジジュースで割るといった方法もあります。お店のソフトドリンクメニューと併せて、オリジナルの割り方を考えて見るのも楽しいかも知れません。
ちょい足しする方法
基本のハイボールにちょっとしたアクセントを加える方法です。レモンやオレンジなどの柑橘類の果汁を絞る、胡椒やシナモンなどのスパイスを加える、ミントやパクチーなどのハーブ類を加えるといったアレンジが可能です。ただし、やり過ぎるとハイボールの利点である「低オペレーション」が崩れてしまうことも考えられるので、お店の状況に併せて検討してみて下さい。
ウイスキーを変える方法
元になるウイスキーにバリエーションをもたせる方法です。こちらも大きな手間がかからず簡単に取り組める方法です。基本のウイスキーだけでなく、バーボンやスコッチで変化を与えたり、プレミアムなウイスキーを用意したりすることで新たな楽しみ方を提供することができます。ウイスキーの種類による飲み比べをおすすめしても良いかも知れません。そして実は、この「ウイスキーを変える方法」こそがハイボールの利益率を向上させる大事なポイントになるのです。
・3層のハイボールで単価向上!
ハイボールに使用するウイスキーを考える上で重要なのは「レギュラー」「プレミアム」「超プレミアム」の3層で構成することです。単価が違う3層のメニューを用意することで、飲み比べによる楽しみを提供できるだけでなく、単価・売上・利益の向上にも役立ちます。
以下のグラフをご覧ください。
◆レギュラーウイスキーのみの場合
売価 | 利益 | 年間杯数 | 売上 | 利益 | |
レギュラーハイボール | 400円 | 334円 | 18,000杯 | 7,200,000 | 6,012,000円 |
◆3層ハイボールの場合
売価 | 利益 | 年間杯数 | 売上 | 利益 | |
レギュラーハイボール | 400円 | 334円 | 9,600杯 | 3,840,000 | 3,206,400円 |
プレミアムハイボール | 450円 | 367円 | 4,800杯 | 2,160,000 | 1,761,600円 |
超プレミアムハイボール | 500円 | 361円 | 3,600杯 | 1,800,000 | 1,299,600円 |
平均売価 433円 | 平均利益 348円 | 合計 18,000杯 | 合計 7,800,000 | 合計 6,267,600 |
年間25万円以上の利益向上!
このように、3層ハイボールを導入することで単価・売上・利益のすべてが向上していることが分かります。バリエーションを増やすことによって、杯数が増えることも考慮するとその効果は更にアップする可能性があります。
○バリエーションアップでハイボールを武器に!
今回はハイボールのバリエーションについて紹介いたしました。根強い人気のハイボールを強化し、お店の武器にしてみてはいかがでしょうか。オペレーションコストとのバランスを見ながら積極的に取り組んでみましょう。また、ウイスキーもたくさん種類がありますので、ウイスキーの選び方に迷ったらぜひ酒屋さんに聞いてみましょう。
今回ご紹介したバリエーションを増やして満足度・単価を向上させる手法は、ハイボールだけでなく他のメニューにも応用ができます。他のドリンクメニューについても積極的に検討し、お店の利益率向上を目指しましょう。