日本でも大ヒットの兆し? アメリカで人気の新感覚アルコール飲料・ハードセルツァー

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ハードセルツァーという言葉を聞いたことはありますか? 2022年のヒット予想にもランクインしている、ヘルシーなアルコール入り炭酸水です。2019年あたりからアメリカのZ世代を中心に支持され、大きなブームを巻き起こしています。日本でもビールメーカーがハードセルツァー事業へ参入を始めており、ヘルシー志向が強いZ世代から人気に火が付きそうです。

  • ハードセルツァーとは?

アメリカで人気を博している「ハードセルツァー」。英語表記すると、Hard Seltzerと書きます。Hard とは「アルコールを含む」「アルコール入り」、Seltzerとは「人工炭酸水」「天然発泡ミネラルウォーター」を意味します。つまりハードセルツァーとは、炭酸水で割ったアルコールに果実フレーバーなどをつけた飲料を指します。

ハードセルツァーのアルコールは、サトウキビ由来の糖分(Cane Sugarケーンシュガー)の発酵によって作られたものがほとんど。サトウキビ由来のアルコール、炭酸水、フレーバーと、とてもシンプルに構成されています。フレーバーも本物のフルーツで香りや味をつけているものが大半。レモン、オレンジ、ライム、シークワーサーなどの柑橘類のほか、パイナップルやベリー系などその種類は実に豊富です。中には、スイカやショウガを用いたフレーバーも登場しています。

果実がメインのフレーバー入りと聞くと、甘い飲み物?と思われるかもしれませんが、ジュースのような甘さはなく、むしろスッキリした飲み口が特徴です。甘みがない分、低カロリー、低糖質。アルコール度も2~5%と低めです。

  • ハードセルツァーがアメリカで人気なワケ

2019年辺りからアメリカで大ブームを巻き起こし、現在もその人気は継続中のハードセルツァー。いまやクラフトビールを凌ぐ勢いだとも言われています。特にアメリカの西海岸での人気が高く、現地のデータ分析会社Nielsenのマーケットリサーチによると、2018年から2019年の売上はカリフォルニア州で524%増を記録。驚異的ですね。アメリカ全土でも193%増という数字が報告されており、人気が急上昇したことがよく分かります。

なぜ、これほどまで人気が出たのでしょうか。その理由は、ヘルシーで、スッキリ飲みやすいからだと考えられます。近年、アメリカではヘルシーというキーワードが重要視され、ヘルシーなものを取り入れたライフスタイルが主流になっています。栄養バランスを考えた健康的な食事を好むことから、ベジミートなどの商品も売り上げを伸ばし続けています。また、ジム通いで体を鍛えたり、ヨガで体を整えたりする人も多く、低アルコール、低カロリー、低糖質、そしてグルテンフリーである点が、そんなヘルシー志向と合致したのです。また、ビールほど苦味があるわけでもなく、かと言って甘すぎることもないため、シンプルなスッキリした味も男女問わず人気が高い理由と言われています。

  • 酎ハイとの違いは?

炭酸とアルコールとフレーバーと聞くと、「ハードセルツァーって、酎ハイとどう違うの?」と思われたのではないでしょうか。飲んだ人ならばすぐに分かると思いますが、味わいは大きく異なります。ジュースのような甘い飲み口が多い酎ハイに比べ、ハードセルツァーはフレーバーを感じられるものの甘みはなく、かなりスッキリしています。例えるなら、酎ハイは「炭酸ジュース」、ハードセルツァーは「フレーバー付き炭酸水」といったところでしょうか。

製造方法をみてみると、酎ハイは焼酎やウォッカといった蒸留酒を炭酸水やフレーバー、果汁で割ります。ハードセルツァーはサトウキビを発酵させたアルコールを炭酸水とフレーバーで割ります。お酒を割るという点ではそれほどの差はありませんが、酎ハイには香料や甘味料がたくさん入っている場合が多いです。アルコール度数は、ストロング系の酎ハイが7~9%、一般的な酎ハイが4~6%。ハードセルツァーは2~5%と比較的アルコール度数は低めです。

カロリーについては、甘味料が少ない分ハードセルツァーのほうが低め。酎ハイが1缶180キロカロリー前後なのに比べ、ハードセルツァーは1缶100キロカロリー以下となっています。また酎ハイと比べて、パッケージがすっきりしておしゃれなものが多いのもハードセルツァー特徴の1つです。

  •  日本でもブームの兆しあり!


アメリカのほか、オーストラリアなどでも若い世代を中心に市場が拡大し、世界的にブームがやってきているハードセルツァー。製造方法がビールに近いことから、世界中のビールメーカーやクラフトビール会社が参入を始めています。日本でも、2021年からビールメーカーがオリジナルのハードセルツァーを発売したり、飲料メーカーが世界20カ国以上で販売されているハードセルツァーを一部地域で販売したりするなど、早くも動き始めています。2022年に入ってからは、他の大手ビールメーカーも競うようにハードセルツァーの取り扱いを発表。早い段階でコンビニやスーパーの棚にコーナーができそうですね。

飲食店での状況はというと、まだまだ取り入れている店舗が少ないのが現状。「酎ハイがあるから必要がない」と軽視せず、アプローチの仕方を考えてメニューに加えてみるのもひとつです。「ヘルシー」「低アルコール」「おしゃれ」といったキーワードを念頭に置き、時代の流れに沿った価値観を提供していくことも大切です。酎ハイの延長線としてではなく、逆に酎ハイを避けていた層やアルコールが苦手という新しい層をターゲットにしてみても良いかもしれません。アルコールを伴う外食に罪悪感を抱きがちな昨今ですから、「低アルコール」で「手軽」に楽しめるという点はアピールポイントになるかもしれません。

  •  まとめ

低アルコール、低カロリー、低糖質、グルテンフリーと、ヘルシー志向の人たちが支持しないわけがないハードセルツァー。ガッツリではなく、少しだけアルコールを飲みたいときにぴったりです。のど越しが良く、口の中に甘さが残らないスッキリさも◎。無糖の炭酸水に慣れている人にとっては受け入れやすいかもしれません。

飲食店のメニューにあれば、男女問わず若い層に響くはず。ビールはたくさん飲めない、酎ハイは甘くて苦手、酔いやすい、少しでもヘルシーなものを飲みたい、という人たちからのオーダーが期待できそうです。アルコールが苦手で、いつもソフトドリンクだったという人にもおすすめできそうですね。

各ビールメーカーも参入を始めているので、今後のハードセルツァーの動向には注目しておきましょう。