世界中で人気、話題のクラフトジンについて徹底解剖

記事一覧

2010年ごろからじわじわと世界各地でブームが広がりはじめたクラフトジン。日本でも2016年ごろから、クラフトジンを製造する蒸留所が全国に増え始めました。多様性が重視される昨今、それぞれ個性が強いクラフトジンはまさに時代にマッチしたお酒とも言えます。今回は、今もなお世界中で人気を集めているクラフトジンについて紹介します。

ジンってどんなお酒?

ジンは、麦やジャガイモ、トウモロコシなどを原料とした蒸留酒(スピリッツ)に、ハーブやスパイス、果物の皮などのボタニカル(植物由来)素材を加え、蒸留させてできたお酒。ウォッカ、テキーラ、ラムと並び、4大スピリッツと呼ばれるお酒のひとつです。ジンの細かな定義づけは国によって違いますが、ジュニパーベリーというスパイスを加えて風味付けすることとアルコール度数が37.5%以上であることが条件と言われています。

このジュニパーベリーは、北半球の比較的寒い地域に分布するセイヨウネズという針葉樹の果実。古くから北米の先住民族はジュニパーベリーを水で煮出し、病気や外傷の治療に使っていたと言われ、欧州でも腸チフスや黒死病などの細菌感染の治療薬としてジュニパーベリー入りの飲料が用いられていました。ジンでは、この果実をフレッシュで使用したり、乾燥させたものを漬け込んだりして風味付けします。

ジンの起源は諸説あります。11世紀ころにイタリアの修道士がジュニパーベリーを使って作った蒸留酒という説や、13~14世紀にオランダで今のジンの原型とされるものを医師たちが腹痛の治療薬として常備していたという説もあります。よく知られているのは、1660年にオランダの医学博士・シルヴィウス氏が植民地における熱病対策に利尿剤として開発した説。いずれもその効能を活かした薬用酒として使われていたようです。

ところが、次第にそのさわやかな飲み口から、薬用ではなく新しいお酒として人気が出始めます。オランダ商人たちにより、「ジュニエーブル」(ジュニパーベリーのフランス語)の名で世界中に広まり、中でもイギリスでは大流行。ジュニエーブルを短縮して「ジン」と呼ばれるようになります。当時は砂糖が加えられた甘口だったそうですが、19世紀に入って連続式蒸留機が登場すると、雑味の少ない辛口のジンが造られるように。現在、世界でジンと呼ばれているお酒のほとんどが、このイギリス風のドライ・ジンです。

話題のクラフトジンとは?

クラフトジンに実は明確な定義はありません。原料・製法・産地など、作り手の強いこだわりが反映されているジンと考えておくといいでしょう。ほとんどが大量生産をしていないため、小規模な蒸留所で造られるものがクラフトジンだとも言えますが、近年は大手メーカーや酒造会社も小ロットのクラフトジンの製造を始めているため、一概に小規模蒸留所のものだけがクラフトジンとは言い切れません。

細かい規定がない分、作り手の個性が強く出るのがクラフトジン。それぞれのこだわりによって生み出される味のバリエーションは驚くほど豊かです。また、蒸留所がある場所やエリアにフォーカスして、その土地ならではのボタニカル素材を取り入れるのもクラフトジンのポイント。クラフトジンを「飲む香水」と例える人もおり、ストレートやロックでもさまざまな味を楽しめます。さらに、一つひとつに作り手の背景や物語があり、それを知ることでより味わい深くなるのも魅力です。

クラフトジンの人気の理由

クラフトジンのブームのきっかけは、2008年にロンドンで誕生したジンの蒸留所「シップスミス」と言われています。約200年ぶりというジン蒸留所の創業は大きな話題となり、これがきっかけで高品質で個性的なジンを作る小規模蒸留所がイギリス内に増えていきました。クラフトビールに倣い「クラフトジン」と呼ばれるようになったのも、この時期だと言われています。こうしてイギリスから始まったクラフトジンの流行は、スコットランドやスペイン、アメリカ、オーストラリアなど、各国にじわじわと広がっていきました。

なぜ、世界的にクラフトジンの人気が高まったのか。それは世の中の動きにも大きく関わりがあります。インターネットの普及により、世界中の情報格差が減り、世の中は画一的になりました。その変化は便利な一方で、それぞれの地域の食文化が埋もれていってしまうという危機感を持つ人たちも出現させました。それぞれの地域の食文化を守ろうという動きが世界各地で起こり始め、同時にサスティナブルなことにも目が向けられるようになります。ただ単に食文化を見直すだけではなく、その土地にフォーカスして進化させる食の新しいスタイルが誕生し、多くの人たちに支持されるようになったのです。それがサードウェーブコーヒーやクラフトビールのカルチャーであり、クラフトジンも同様の流れを辿っていると考えられます。

また、クラフトジンに欠かせない「ボタニカル素材」も人気の理由のひとつです。優しい、癒やされる、ナチュラルといったイメージのボタニカルは、この数年ファッションやライフスタイル分野でも人気。お酒もボタニカルで楽しみたいという女性が増えていると言われています。それぞれの地域のハーブや素材を用いたクラフトジンは、味がとにかく多彩。さらにおしゃれなボトルデザインが多いのも人気の理由の一つかもしれません。

日本のクラフトジン事情

世界的なクラフトジンブームは、じわじわと日本へも波及。2016年には日本初のジンを専門とした蒸留所「京都蒸留所」が誕生しました。その後、各地の酒造メーカーや大手メーカーが参入を発表し、大小さまざまなジンの蒸留所が全国各地にオープン。日本ならではのボタニカル素材を用いた個性的なジンが数多く誕生しています。たとえば、ユズやスダチなどの柑橘類、山椒や生姜といった日本の薬味、玉露や煎茶など。桜、ヒノキといった樹木を取り入れたものも多数あります。さらに、北海道であればラベンダーや昆布、沖縄はシークヮーサーやゴーヤ、グァバなど、各地の特産品を用いているものもあります。

これらは「ジャパニーズジン」と呼ばれ、和食との相性も良いため、世界中から注目を集めています。前述したボタニカル素材はもちろん、ベースとなるスピリッツもお米由来のライススピリッツや麹仕込みのスピリッツなど、日本らしさを打ち出したものが登場しています。

また、製造だけでなく、クラフトジンを楽しめる専門店も少しずつ増えています。100銘柄以上、世界各国のクラフトジンを取り扱う店も多数。中には500銘柄近くを扱う店もあるくらいです。日本酒やワインのように、料理に合わせて数種類のクラフトジンを置く店も増えつつあります。

おすすめの選び方、飲み方

世界中で造られているクラフトジン。たくさんの中からどれを選べばいいか分からないという人も多いはず。選び方のポイントとしては、①産地で選ぶ、②素材で選ぶ、③ボトルデザインで選ぶ、いずれかに着目してチョイスするのをおすすめします。

①の場合、造られている国によってそれぞれ趣があるため、自分の好きな国で選んでみましょう。特にないという場合は、オーソドックスにイギリス産から始めてみるといいかもしれません。

②のボタニカル素材を確認して選ぶ場合は、ピリッと辛口な味を求めるのであればスパイス系を、甘い香りや味を楽しみたいのであればフローラル系を選択。初めてでどうしても迷ってしまう人は、割と飲みやすい柑橘系を選んでください。

③のボトルで選ぶのは、直感的な部分もありますが、クラフトジンのボトルは、実は細部までこだわって味わいやコンセプトを伝えている場合が多く、そんな作り手の想いを感じて選ぶのも一つです。

クラフトジンの飲み方はもちろん自由ですが、初心者の人におすすめするのはジントニックです。まずはロックでひと口。そのあと、少しずつトニックウォーターを足し、クラフトジンの味と香りをじっくり楽しんでください。味わい方が分かってきたら、好きな柑橘をグラスにプラスしたり、ベリー系のドライフルーツを入れてみたりといったアレンジもおすすめ。レモンジュースとジンジャーエールを注ぐジンバックやソーダで割るジンリッキーも飲みやすいです。お酒が強い人はストレートやロックもOK。ただし、アルコール度数が高めなのでチェイサーを用意するなどして、ゆっくり舐めるように味わいましょう。

まとめ

カクテルのベースというイメージのジンでしたが、クラフトジンは規定がない分、独自のボタニカルを採用するなど素材にこだわっているものが大半で、個性も強め。銘柄によって異なる風味を楽しめるのが魅力です。飲食店の場合、店の料理に合ったタイプのクラフトジンを数銘柄置いておくのもおすすめです。ボトルデザインもおしゃれなものが多いので、棚にあるだけでも絵になります。国産のクラフトジンもまだ増えていくようなので、これからも目が離せませんね。