世界中が注目!ブルガリアワインはどんなワイン?

お酒の知識

ヨーロッパにおけるワインの原産国と言えば、フランス、イタリア、ドイツなどを思い浮かべる人が多いのでは?しかし今世界中で注目されているのが、東欧ブルガリアのワインです。日本ではまだそれほど浸透していませんが、これから人気が出そうな予感。今回はこのブルガリアワインについて紹介します。いち早く流行をキャッチし、お店での取り扱いを検討してみてはいかがでしょうか。

ブルガリアはどんな国?

ブルガリアの正式名称はブルガリア共和国と言います。ヨーロッパの南東部にあるバルカン半島の東に位置し、ルーマニア、セルビア、ギリシャ、トルコ、黒海と接する国です。国土の三分の一を山地が占め、国のほぼ中央にはバルカン山脈が東西に延びています。山脈の北側は大陸性気候、南側は温暖な地中海性気候で、この気候が多彩なワイン造りに大きく影響を与えています。

日本人はブルガリアと聞くと、ヨーグルトやバラをイメージする人が多いかもしれませんが、実は優れたワインを造り続けている国でもあります。2つの気候に恵まれた土地は、ブドウ栽培に適していると言われ、醸造家たちから「奇跡の土地」と評価されるほど。大きく分けて山脈の北側は白ワイン、南側は赤ワインが有名です。

なぜブルガリアワインが注目されるのか?

ブルガリアでは古くからワイン造りが行われてきましたが、近年注目されるようになったのは、輸出ワインの平均金額が安価であること、土着品種の高品質ワインが比較的お値打ち価格で手に入るからと言われています。

社会主義国家だった1980年代までは国際品種のワインが大量生産されていましたが、民主化に伴いワイナリーが民営化されると、テロワール(気候、土壌、地形などブドウ畑を取り巻く生育環境の特徴)の概念を取り入れた土着品種の栽培が増え、独自性をアピールしたワインが誕生。現在、2000種ほどの土着品種が栽培されており、他国ワインとの差別化を図っています。とはいえ、大量にワインを輸出していた頃の国際品種の古樹も栽培面積の半分以上残っており、これらからコストパフォーマンスの良い国際品種のワインも多く醸造されています。ちなみに、ワイン用のブドウ栽培面積はフランスのアルザス地方と同じくらいの2.15万ヘクタールあり、ワイナリーの数は270ほどあります。これは日本のワイナリーの数と同等です。

2007年、EUに加盟すると醸造設備や技術がさらに向上。また、国外でワイン造りについて学んできた人たちがブルガリアへ戻り、品質向上に努めたことで、力強くも繊細な味わいの高品質ワインが次々と誕生しました。ブドウ栽培から醸造までを手掛けるブティックワイナリーも増え、あらためてブルガリアワインが世界から注目されるようになりました。加えて、ブルガリアはワイン業界で働く女性の割合が47%ととても高く、ジェンダー平等を掲げているSDGsの観点からも関心が寄せられています。

ブルガリアワインの歴史

ブルガリアでは4000年以上前からトラキア人(古代にバルカン半島周辺に住んでいた民族)によってワイン造りが行われてきたと伝えられています。古代ギリシャ人の文献に、トラキア人のワイン製造技術が記されていることからもブルガリアが世界最古のワイン生産国の一つであったと考えられます。古代ギリシャ神話に登場する酒の神・ディオニソス(バッカス)は、ドナウ川の南・トラキア地方から現れたとされていますが、これはトラキアの遊びと酒の神・デューニシウスであるとも言われています。

7世紀にブルガリア王国が建国されてからもワイン造りは行われてきました。ところが14世紀になりオスマン帝国の支配下に入ると、お酒を飲まないイスラム教の影響でワイン産業は衰退してしまいます。ワイン産業が復活するのは、1909年にオスマン帝国から独立が認められたあとになります。

第二次世界大戦後、ブルガリアは社会主義国になり、ワイン産業も国営化されます。旧ソ連の衛星国となったブルガリアでは、旧ソ連市場へ輸出するためワインを大量生産するようになりました。しかし、当時は質より量を重んじていたため、ワインの品質は下がってしまいました。

1970年代に入ると醸造施設の入れ替えや技術改善が行われ、メルロやカベルネソーヴィニヨンといった国際品種の栽培が増え始めます。1980年代には品質の良さと手ごろな価格が評判となり、西側諸国とも取引を開始。フランスに次いで世界第2位のワイン輸出国になった時期もありました。しかし、ブルガリアワインの一大供給地であった旧ソ連の崩壊や、アメリカ、チリ、オーストラリアといったニューワールドのワインの台頭により、その輸出量は大幅に下がります。

1989年のベルリンの壁崩壊後、民主化が進み、国営だったワイン産業も民営化されます。1990年代後半にはテロワールの概念をベースに新たなワイン法が制定され、現在は国際品種だけでなく土着品種を用いたワイン造りも盛んに行われています。

ブルガリアワインの産地

ブルガリアワインの産地は大きく5つのエリアに分けられます。

1/北部 ドナウ平原

ルーマニアとの国境を隔てるドナウ川南側のエリアで、ブルガリア最大のワイン産地。夏は暑さが厳しい大陸性気候ですが、年間を通して日照時間には恵まれています。死火山から成る土壌はミネラルが豊富。国際品種のカベルネソーヴィニヨンやメルロ、シャルドネなどが栽培されているほか、土着品種は黒ブドウのガムザが栽培されています。

2/東部 黒海沿岸

リゾート地としても有名な場所。秋が長く温暖な地中海性気候で、半辛口の白ワイン造りに適していると言われます。特に、ソーヴィニヨンブランの品質が高く、フルーティーな白ワインが評判です。

3/中央部 ローズ・ヴァレー

バラの栽培でも知られる地域で、ブルガリア固有のピンクの皮をした白ブドウ・レッドミスケットの発祥の地でもあります。近年はブティックワイナリーが次々と誕生しています。

4/南東部 トロキア・ローランド

ブルガリアで最も重要なワイン産地。冬場の雨量が多いにも関わらず、ブドウ栽培に重要な夏場は晴れの日が続き、質の良いブドウができると言われています。土着品種のマヴルッドなどが栽培されています。また、オーガニック栽培をはじめるワイナリーが増えている地域でもあります。

5/南西部 ストゥルマ・バレー

マケドニアのエーゲ海の影響を受け、夏は暑く乾燥する地中海性気候で、ブルガリアの中で最も晴れの日が多い地域。カベルネソーヴィニヨン、メルロなどの国際品種が栽培されており、長期熟成型の赤ワインで知られています。

ブルガリアの土着品種

ブルガリアの土着品種は全部で約2000種と言われています。その中でも、知っておきたい品種を紹介します。

レッドミスケット(白ブドウ)

ブルガリア固有の品種で、晩熟で耐寒性に優れています。ワインにすると淡い黄金色で、トロピカルフルーツのような華やかな香りを楽しめます。酸味が少なく、ほかの白品種とブレンドされることもあります。

ディミャット(白ブドウ)

耐寒性がないため、温暖な黒海沿岸で栽培されている品種。桃のようなフルーティーな香りがするフレッシュな味わいのワインです。

メルニック(黒ブドウ)

ストゥルマ・バレーで主に栽培されています。エキゾチックな芳香がするパワフルな印象の赤ワインです。

マヴルッド(黒ブドウ)

生産量は少ないですが、トロキア・ローランドで栽培されているブルガリアを代表する土着品種。何世紀にも渡って栽培されていますが、耐寒性が乏しく栽培が難しいと言われています。若いうちはチェリーなどの香りがし、熟成させるとスパイシーさが加わります。

ガムザ(黒ブドウ)

ドナウ平原で主に栽培されている品種。他の東欧諸国では「ガダルカ」とも呼ばれています。酸が高く、タンニンは少ないタイプですが、ワインにして数年熟成させるとベリー系の華やかな風味が楽しめます。

まとめ

ブルガリアがワイン造りに適した土壌を有する国であり、ワイン造りに関してもとても長い歴史があるとお分かりになったかと思います。お手頃価格で高品質なブルガリアワイン、これからますます目にする機会が増えそうです。新しいワインを検討されているなら、これを機にお店に置いてみるのもいいかもしれません。