ワインと調味料のいい関係|醤油

お酒の知識

料理は食材・調理法・味付けなど様々な要素から成り立ちます。

お酒と料理の相性を考えるとき、その料理の主食材にフォーカスすることが多いはずですが、味付けや風味付けから着目してみるのもおもしろいアプローチではないでしょうか?

今回は、私たち日本人に一番なじみ深い『醤油』とワインの相性を考えてみます。

醤油とは何者かを簡単に

醤油(しょうゆ)は、主に穀物を原料とし、醸造技術により発酵させて製造する液体調味料である。日本料理における基本的な調味料の一つ。同様の調味料は東アジアの民族料理にも広く使用される。
~Wikipediaより~


材料は主に、大豆・小麦・塩の3つです。
同量の蒸した大豆と炒った小麦に、麹菌を加えて繁殖させ『麹』を造ります。
麹に塩水を加えて発酵させた『もろみ』を熟成させて、搾れば醤油となります。

醤油の種類からワインを考える

JAS規格によると醤油は5つに分類されます。
白醤油・淡口醤油・濃口醤油・再仕込み醤油・たまり醤油です。
それぞれの特徴から、ワインとの相性を考えてみます。

白醤油、淡口醤油には白ワイン。

白ワインと合わせやすいのは『白醤油』や『淡口醤油』です。
「大豆と比べて小麦の比率が多い」「熟成期間が短い」などといった醤油が分類されます。

色は淡く、旨味を抑えており、塩分が高めです。直接なめると、しょっぱさは強いのですが、素材そのものの味わいや風味を引き立ててくれます。蒸した野菜、白身魚や甘エビ、貝類などの繊細な旨味を楽しめるお料理や食材にピッタリな醤油です。

イメージ的に“塩とレモンとオリーブオイル”の代わりにもなりそうです。そう考えると、白醤油や淡口醤油を使ったお料理なら、白ワインが飲みたくなります。

濃口醤油はロゼ、オレンジワイン。

一般的な醤油と呼ばれるものは『濃口醤油』で、流通している約80%の醤油はこのタイプです。濃口醤油は、言わば“醤油界の万能選手”です。ロゼワインとオレンジワインの持つ、醸造由来の『赤ワインと白ワインのいいとこどり』な特徴も“ワイン界の万能選手”と言えます。

例えば、ロゼワインに感じる『爽やかさの中にある仄かなコク』は、柚子の香りがついた醤油ダレと同調します。また、お刺身を食べるときに濃口醤油の中にゴマや生姜を入れると、オレンジワインの軽やかな渋みや後味と馴染みます。

醤油単体で味わいを構築する料理はほとんどありません。みりんや砂糖、酒や酢を加えながら味を調えていきます。薬味やスパイスを使うこともあります。何らかの風味が加わった濃口醤油には、ロゼワインやオレンジワインの中に感じる『親しみやすい複雑さ』がピッタリなのです。

再仕込み醤油、たまり醤油は赤ワイン。

赤身の魚や牛肉のステーキなど、「素材自体の風味が強い」「ソースをかけて食べたい」というような食材やお料理には、再仕込み醤油やたまり醤油がオススメです。

再仕込み醤油とは、濃口醤油の約2倍の原料と2倍の熟成期間を必要とします。たまり醤油は大豆のみで造るのが主流です。これらは、使われる大豆の量が多く熟成期間も長いので、色調は濃く、旨味は強いが塩気を感じにくい醤油です。料理に使うと、色がしっかり付いて味わいの重心が低くなるので、ワインも重心の低いどっしりとした赤ワインが合わせやすくなります。

パワーのある醤油なので、生臭さなどのネガティブな部分を抑え込みますが、素材やワインにもある程度の強さがないとバランスをとるのが難しくなります。


料理によって醤油を使い分けるように、醤油によって合わせるワインを変えていきます。

同じ食材でも仕上げにかける醤油を変えれば、合わせるワインの選択肢を増やすことができるのです。例えば、フライパンで焼いた鶏モモ肉を食べるときに、一緒に飲むワインがブルゴーニュのシャルドネならば白醤油や淡口醤油。オレゴンのピノ・ノワールならば濃口醤油や再仕込み醤油といった感じです。

ワインから相性を考えてみる

ピノ・ノワール

ピノ・ノワールから造られるワインと醤油には ①テクスチャー ②口内での味わい・フレーバーの広がり方に共通点があります。

①生産者や地域、スタイルにもよりますが、ピノ・ノワールの味わいは柔らかな赤果実の風味をタンニンと酸が引き締めている構成です。醤油は醗酵由来の丸みのある旨味を塩味が引き締めている味の構成なので、この二つは同調しやすいのです。
②ピノ・ノワールが熟成すると香りの点でも醤油との共通点が生まれます。土や枯葉、キノコのような要素が出現し、アフターフレーバーも含めて馴染み合う感覚が口の中に広がるのです。

刺身のように直接つけるものから、火を通して香ばしさを出す料理まで幅広く合わせられます。
ブドウの品種は違いますが、ガメイやサンジョヴェーゼでも前述のような共通点が生まれやすいです。

シャンパーニュ

酵母(オリ)と長期間接触しながら醸造されるシャンパーニュは、他のワインと比べるとアミノ酸が多く含まれています。アミノ酸といえば、醤油にも多く含まれている旨味成分の一つです。旨味同士が合わさって相乗効果が生まれます。キレイな泡立ちや爽やかな喉越しが注目されがちですが、ぜひその旨味にもフォーカスして味わってみてください。
また、シャンパーニュは酸味も豊かなワインです。醤油に少しだけお酢を加えたり、柑橘を軽く絞ったりすると、繊細な酸味がいい具合に橋渡し役になってくれます。

まとめ

日本人に一番なじみ深い調味料だからこそ、種類だけでなく、地域によっても味付けや使い方がたくさんあります。そして、ワインにも同じようなことが言えます。
仕上げに使う醤油をちょっと変えてみるだけで、お酒との相性に思いがけない発見があるかもしれません。みなさんも色々と試して楽しんでみてください。