「とりあえず泡で!!」
「とりあえず生ビールで!」のような気軽さで、スパークリングワインを注文される方が多くなってきています。そのぐらい日常の食事のシーンにスパークリングワインは定着しているのでしょう。
数年前は『泡』と呼ぶことすら知らなかったですし…。
華やかさと、ちょっとした贅沢感。お食事の場を盛り上げるという演出効果もあり、そのような付加価値は、他の飲み物ではあまり感じることのない魅力の一つです。
そもそもスパークリングワインって…
スパークリングワインとは、一般的に『3気圧以上のガス圧を持った発泡性ワイン』の総称です。
1~2.5気圧は弱発泡性、0.5~1気圧は微発泡性と分けられます。ちなみに、ビールは大体2気圧だそうです。
スパークリングワインとは英語での名称ですが、発泡性ワインは世界中で造られています。
○フランス語だとヴァン・ムスー
○イタリア語だとスプマンテ
○スペイン語だとエスプモーソ などなど
これらが、発泡しているワインを示す大きな名称で、地域や造り方によってさらに呼び方が分けられていきます。
いろいろな造り方
スパークリングワインの代表的な造り方をご紹介します。
①瓶内二次発酵式
シャンパーニュ方式とも呼ばれています。
一度造ったワインの中に糖分と酵母を加え、瓶の中でゆっくりと二次発酵させながら熟成します。手間と時間をかけることで、きめの細かい泡立ちと複雑な味わいになるのです。
それぞれ細かい法定の違いなどはありますが、フランスでは『シャンパーニュ』や『クレマン』、イタリアでは『フランチャコルタ』、スペインでは『カヴァ』と呼ばれるものがこれに当たります。
②シャルマ方式
できたワインを瓶に詰めず、密閉した大きなタンクの中で二次発酵を行います。
短期間に一定量のスパークリングワインを製造できるので、①や④と比べるとコストや手間を抑えることができ、管理しやすいのがメリット。
また、製造過程でワインが空気と接触しないので、フレッシュな香りと味わいのワインが造られます。主にイタリアの『プロセッコ』や『モスカート』をはじめ、日本やオーストラリア、チリ、ニュージーランドで多く採用されており、気軽に楽しめるタイプが多いです。
③炭酸ガス注入方式
読んで字のごとくです。
瓶に入れたワインに炭酸ガスを注入して、人工的にスパークリングインを造ります。
大量消費用のスパークリングワインに多く利用されています。
④田舎方式
メトード・アンセストラルとも呼ばれています。
アルコール発酵の途中で液体を瓶に詰めて栓をし、残りの発酵を瓶の中で行います。アルコール発酵ではエチルアルコールと二酸化炭素が発生します。瓶内二次発酵ではなく、一次発酵によるブクブク(二酸化炭素)を利用して発砲させます。
ここ数年じわじわと人気が来ている『ペットナット』もこの手法です。ペットナットとはフランス語で“自然微発泡”を意味する“ペティアンナチュレル”の略称のこと。微発泡の刺激が心地よく、低アルコールで軽やか、スルスルと飲んでしまうワインです。
この他にもドイツの『ゼクト』、イタリアのエミリア・ロマーニャ州の微発泡性ワイン『ランブルスコ』など、味わいも色調も様々な種類がありますので、いろいろとお試しいただきたいです。
楽しみ方もいろいろ
「とりあえず泡で!!」とも言われているので、食前酒・乾杯用のイメージが多いですが、実は様々な場面で活躍してくれます。
とりあえずの1杯だけではもったいない…。
そのワインのポテンシャルを十分に味わいきれないこともあります。ボトル1本のスパークリングワインを120%楽しむ、お客様に150%楽しんでいただくには、こんな方法もあります。
温度を変えて飲んでみる
キンキンに冷やして飲むのは最高です。しかし、せっかくなら色々な温度帯で楽しんでいただきたいです。
シャンパーニュの場合、銘柄によっては黒ブドウと白ブドウを混ぜて造られています。しっかりと冷えている時は白ブドウ由来の酸味とキレ味が楽しめ、温度が上がるにつれて、黒ブドウ由来のしっかりとした果実味と香りが広がってきます。
キリッと冷やして食前酒でお出しし、その後は常温で置いておき、温度が上がるにつれて開く香りや味わい、泡の質感の変化も楽しんでいただけるはずです。
シュワシュワのその先へ
個人的な感覚ですが、いいスパークリングワインはガスが抜けても美味しいです。
食前酒のグラススパークリングのガスが抜けているというのは問題外ですが、ボトル1本をゆっくりと味わった結果、終盤にガスが弱くなるというのは問題ないかと。
時間の経過と共に、シュワっとした泡立ちに隠れていたまろやかさや、ふくよかな果実味が顔を出してきます。
ワイングラスを料理ごとに替えてみる
ワイングラスの形や大きさを変えても、香り・のどごし・味わいが変化します。
コース料理を、スパークリングワイン1本で通して召し上がるお客様には、料理に合わせてグラスの種類を変えていく提案もできます。
最初の一杯は口径の細いフルートグラス。コースが進むにつれ、だんだんと口径の大きいものに変えていき、メインの肉料理の時にはブルゴーニュグラスを使ってみることも。
お食事のタイミングで温度を変えることや、様々なグラスを使う提供方法は、お店のピークタイム中やご自宅では、難しい場面も多くあると思います。味わいの変化の演出の一つ、ボトル1本をさらに楽しむ方法の一つとして、頭の片隅に置いていたいただければ嬉しいです。